火を使わずにメイン料理を作る、電子レンジ調理の具体的なコツと活用法を紹介する記事です。
パートから帰り、保育園のお迎えを済ませた平日の夕方。
キッチンに漂うむわっとした熱気だけで、どっと疲れがこみ上げてくることがあります。
もう火の前に立ちたくない。
コンロの前に立って、フライパンを振る気力がどうしても湧いてこない日。
そんな日が増えてきたような気がします。
「火を使わない=手抜き」の罪悪感から、私を救ってくれた調理法
「ママ、おなかすいたー!」
玄関で靴を脱ぐ前から始まる子供たちのコール。
そして、キッチンに立とうとする私の足にまとわりついてくる下の子。
以前の私なら、この状況で無理やり火をつけていました。「ちゃんと、作らないと…」その一心でした。
もちろん、電子レンジ調理を試したことはあります。
でも、メインのおかずを作ろうとすると、決まって失敗するものでした。
- 鶏肉は加熱ムラができて一部は生なのに、一部はパサパサ。
- ウインナーやナスは、穴を開け忘れて庫内で破裂する。
結局、電子レンジは「下ごしらえ」か「温め直し」専用。
メインのおかずを電子レンジだけで作るのは「手抜き」で、美味しくないし、家族に申し訳ない。そんな強い思い込みがありました。
惣菜やデリバリーは便利だけれど、毎日はコスト的にも厳しいし、何より「母親が温かい食事を作っていない」という罪悪感が、私を許してくれなかったのです。
私が「レンジ調理」の失敗から学んだ、3つのコツ
その考えが変わったのは、ある調理器具(シリコンスチーマー)を手に入れたのがきっかけでした。
ただの容器だと思っていたのですが、付属していた小さなレシピ集には、私の失敗を解決するヒントが詰まっていたのです。
それは、「レンジ調理は、火の調理とルールが違う」という、当たり前の事実でした。
ちなみに、この記事で紹介する加熱時間は、基本的にわが家の電子レンジ(600W)を基準にしています。お使いの機種によって数秒~数十秒の差が出ると思うので、最初は少し短めに設定して、様子を見ながら調整するのが一番のコツです。
1. パサつきを防ぐ「保水」と「余熱」
一番の悩みだった、お肉が硬くなる問題。
火で焼くときは「強火で一気に」が美味しくなるコツだったりしますが、レンジは逆でした。
下味に「砂糖」を使う
鶏肉などを下味につける際、砂糖を少量もみ込むと、保水性が高まって(水分を保ってくれて)しっとり仕上がります。
加熱しすぎない
レンジ加熱は、加熱をやめてからも食材の中で熱が通り続けます。
レシピの時間通りに加熱したら、すぐに取り出さず、ラップや蓋をしたまま数分「余熱で火を通す」ことが大切です。
この「余熱で待つ」時間を覚えただけで、鶏むね肉が驚くほど柔らかく仕上がるようになったのです。
最近では、「不織布のクッキングペーパー」で鶏肉を包んでから加熱する方法も試しています。
調味液がムラなく染み込んで、さらにジューシーに仕上がる気がして、気に入っています。
2. 加熱ムラと破裂を防ぐ「下ごしらえ」
電子レンジは、マイクロ波(小さな電波のようなもの)で食材の水分を振動させて加熱する仕組みです。
だからこそ、食材の状態を均一にしてあげることが大切だった、というわけです。
- 均等に切る:火の通りを均一にするため、食材はなるべく同じ厚さ、同じ大きさに切ります。
- 穴をあける:皮付きの鶏肉、ウインナー、なす、卵(黄身)などは、加熱前にフォークなどで数カ所穴をあけます。水蒸気の逃げ道を作り、破裂を防ぐためです。
- 途中で裏返す:鶏もも肉のような厚みのある食材は、加熱時間の途中で一度取り出し、裏返す(上下をひっくり返す)ことも有効です。
これを守るだけで、加熱ムラや「爆発」の失敗が劇的に減りました。
特に鶏肉などの生肉は、食中毒が一番怖いですよね。
安全な加熱の目安は「中心温度が75℃以上で1分以上」だそうです。
私は加熱後、竹串を刺してみて透明な肉汁が出るかを確認しています。
こうした「安全のひと手間」をかけることが、罪悪感なくレンジ調理を受け入れるためにも大切だと気づきました。
[参考]厚生労働省「食中毒予防のポイント」
3. 「その場を離れられる」メリットを最大化する
電子レンジ調理の最大の利点は、火加減の調節が要らないこと。
セットしてしまえば、その場を離れられる。
この数分が、私にとっては命綱のような時間になりました。
レンジが動いている間に、子供の連絡帳をチェックしたり、洗濯物を取り込んだりできる。
火を使っていると、子供に呼ばれても「ちょっと待って!」とイライラしてしまいがちでしたが、そのストレスが消えたのは大きな変化でした。
火を使わずに完成する、我が家の定番メインおかず
今では、専用のシリコンスチーマーや耐熱容器を使って、火を使わないメインおかずの日が週に何度かあります。
- 豚バラともやしの重ね蒸し:豚バラ肉、もやし、ニラを使います。耐熱皿にもやしと肉を重ね、調味料をかけて加熱するだけ。ポン酢で食べます。
- ・鶏もも肉のさっぱり煮:鶏もも肉、キャベツ、調味料を使います。鶏肉に穴をあけ、キャベツと耐熱容器に入れて加熱。一度冷ますと味が染みます。
- ・レンジでさばのみそ煮:さば(切り身)と味噌などの調味料を使います。クッキングペーパーで包むようにして加熱すると、味が均一に染み込みやすいです。
- ・レンジハンバーグ:合いびき肉、玉ねぎなどを使います。玉ねぎもレンジで先に加熱しておけば、時短になります。焼かないので、ふっくら仕上がります。
「ちゃんと作らないと」いう呪縛が解けた夜
電子レンジ調理を「手抜き」ではなく「効率化」として受け入れられるようになってから、夕方のキッチンに立つストレスが、ふっと軽くなりました。
もちろん、フライパンで焼いた香ばしさや、鍋でコトコト煮込んだ深みも大好きです。
でも、疲れ果てて気力がない日に、無理をして火の前に立つ必要はなかったのです。
電子レンジがメインのおかずを作ってくれている間に、子供の他愛ない話を聞く余裕が生まれる。
そして何より、夕食後の片付けが劇的に楽になりました。
油ハネでベトベトになったコンロを拭く作業がなくなり、洗い物も調理に使った耐熱容器だけ。
「これ、レンジで作ったんだよ」と言っても、夫も子供も「美味しい」と食べてくれる。その事実に、私は救われました。
「ちゃんと作ること」と「火を使うこと」は、イコールではなかった。
私にとって大切なのは、無理をしてイライラしながら食卓を囲むことではなく、少しでも心に余裕を持って、家族と「いただきます」を言うことだったんだと、今更ながら気づいたのです。
私が「完璧」を手放す、始まりの物語
この記事でお伝えした工夫も、私を縛っていた「ちゃんとしなきゃ」という思い込みから自由になるための、大切な一歩でした。
でも、そんな私が「完璧でなくてもいい」と自分自身を許せるようになる、その一番最初のきっかけをくれたのが「野菜の皮むき」という、たった一つの家事を手放した日のことだったんです。
この記事の根底にも流れている、私の「手抜きは愛情表現」という考え方の原点が、ここに詰まっています 。