「一汁三菜」のプレッシャーを手放し、具だくさんスープで献立を簡素化する体験談。
以前の私は、夕食の時間が近づくと憂鬱でした。パートから帰り、子供の世話をして、息つく間もなくキッチンに立つ。
それなのに、頭の中は「何品も作らなきゃ」という焦りばかり…。
インスタグラムで見る「#丁寧な暮らし」とは程遠い現実。ご飯と汁物だけの日なんて、家族に「ごめん」と心の中で謝る日々でした。
“ちゃんと作れない”罪悪感で泣いた日。私を変えた「たった一つの汁物」
産後、体調がすぐれない日が増え、家事も育児も中途半端。夫は家事育児に協力的とは言えず、私のイライラが募るばかり。
特に苦痛だったのが、毎日の夕食の献立決めでした。
「一汁三菜」。
この言葉が、私を重く縛り付けていたのです。
主菜と、副菜を2品、それに汁物…。仕事と育児で疲れ果てているのに、そんな品数を用意できるわけがない。
ある日、疲れがピークに達して。結局、ご飯と、わかめが少し浮いているだけのお味噌汁しか作れませんでした。
食卓につく夫の、何も言わない、その静けさが辛い。
私はキッチンで一人、“ちゃんと作れない”自分を責めて、涙が止まりませんでした。料理が嫌いになりそうで、本当に苦しかったのです。
「一汁一菜」という、新しい光
そんなボロボロの私が出会ったのが、「一汁一菜(いちじゅういっさい)」という考え方でした。
ご飯と、汁物と、おかずが1品あればいい。
最初は半信半疑でした。
でも、調べてみると、そもそも「一汁三菜」は神様へのお供えやハレの日の食事が基本だったという説もある。
毎日ごちそうを作る必要なんてなかったんだ…と、少し肩の荷が下りた瞬間でした。
「おかず」の代わりになる、「具だくさんスープ」という発明
でも、正直に言うと、その「おかず1品」さえ面倒な日がある。
そこで思いついたのが、汁物自体を「おかず」にしてしまうこと。つまり、「具だくさんスープ(汁物)」と「ご飯」だけ。
罪悪感ゼロ。栄養バランスの「思い込み」を捨てる
一番不安だったのは、栄養面です。
「汁物だけなんて、手抜きだ」「栄養が偏ってしまう」と、また罪悪感に苛まれそうでした。
でも、よく考えてみたのです。
具だくさんスープなら、野菜、きのこ類、お豆腐、お肉やお魚まで、一度に摂ることができます。
例えば豚汁。これだけで、野菜もタンパク質も十分すぎるほど。
お米だって、タンパク質やビタミンを含む立派な食材。
そして、お味噌汁の味噌(大豆)が、お米に不足している必須アミノ酸9種類を補ってくれる。
[参考]【味噌の栄養と効能】知られざるみその健康効果とは | maruman
品数だけを揃えるために、カット野菜のサラダや冷凍食品に頼っていた頃よりも、ずっと栄養バランスが取れているじゃないか。そう思えるようになったのです。
私がいつも作る「ほったらかし」具だくさんスープ
私の作り方は、本当にシンプルです。
- 冷蔵庫にある野菜(大根、にんじん、ごぼう、きのこ、かぼちゃ など)を、食べやすい大きさに切る。
- タンパク質(豚肉、鶏肉、ソーセージ、豆腐 など)も一緒に入れる。
- 和風だしやコンソメで、コトコト煮込む。
- 最後に味付け。
この最後の味付けが、私の「手抜き感」を消してくれる大切なポイントです。
味噌や塩こしょうだけでなく、最近では、味噌に少量のバターや牛乳を足してコクを出したり、仕上げにごま油を垂らして風味を変えたり。
これだけで「いつものお味噌汁」から「満足感のあるスープ」に変わるんです。
私のお気に入りは、豚肉と根菜たっぷりの生姜スープや、かぼちゃとソーセージのクリームスープ。
これなら「おかず」がなくても、家族みんなが喜んでくれる立派な「主菜」になります。
調理時間は10分ほど。
煮込んでいる間は、子供の相手もできます。包丁を使うのが面倒な日は、カット野菜を使うこともあります。
品数よりも、温かい湯気。食卓で見つけた「小さな幸せ」
「一汁三菜」という呪いを手放してから、驚くほど心に余裕が生まれました。
あんなに怖かった夕食の時間が、今は少し楽しみにさえなっている。
品数が完璧に並ぶ食卓よりも、家族が温かい湯気を囲んで「おいしいね」と言い合える時間。
具だくさんのスープと、炊き立てのご飯。私たち家族には、それだけで十分だったのです。
“ちゃんと作れない”という罪悪感ではなく、“これなら私にもできる”という小さな自信。それが、今の私を支えてくれるような気がします。
もう、SNSの「#丁寧な暮らし」を見て、自分と比べて落ち込むことはありません。
私には私の、家族には家族の「ちょうどいい」がある。そう思えるようになった、今日この頃です。
