面倒な「計量」をやめる決意。私が見つけた「味付け黄金比」と「目分量」の簡単なコツ

面倒な「計量」をやめる決意。私が見つけた「味付け黄金比」と「目分量」の簡単なコツ

料理の味付けを安定させ、面倒な計量作業から解放されるための「黄金比」の活用法と「目分量」の練習ステップを紹介します。

キッチンに立つたび、小さなため息が出るものでした。調理中に「アレ大さじどこ?」と探し物が増える時間。

やっと見つけた計量スプーンは、みりんや醤油でベトベトになり、ただでさえ多い洗い物がまた一つ増える憂鬱。

料理中のこういう小さなストレスが積み重なって、私にとって料理全体が「面倒なもの」になっていたような気がします。

レシピの呪縛から、少しずつ自由になれた日

以前の私は、レシピ通りに作らないと失敗するというプレッシャーに、強く縛られていました。

パートと育児に追われる日々。夕飯の準備は時間との戦いです。

ある日、疲労がピークだった私は「えいや!」と、レシピの「大さじ1」を、感覚でドボドボと入れてみたのです。

結果は、しょっぱすぎて誰も箸をつけられない一品。

夫の無言の視線が突き刺さり、「ああ、やっぱりダメなんだ」と。

それ以来、どんなに面倒でも、どんなに時間がなくても、計量スプーンで律儀に計るようになりました。

でも、心のどこかでは「もっと感覚で作りたい」と思っていました。料理上手な人が、感覚で味付けしていく姿への憧れ…。

私の「適当」は失敗につながるけれど、あの人たちの「適当」はなぜ美味しいんだろう?

その違いが分からず、私はずっと計量カップとレシピの奴隷だったわけです。

「黄金比」が教えてくれた、味付けの正解

転機になったのは、「黄金比」という考え方を知ったことでした。
味が決まらないのは私の感覚が悪いからではなく、単純に「美味しいバランス」を知らなかっただけ。

そう気づいてから、まずは「レシピを見なくても味が決まる」ことを目標にしました。

コラム:私が「さしすせそ」の順番を意識し始めた理由

黄金比と合わせて、もう一つ知ってよかったのが、調味料を入れる順番『さしすせそ』です。

これは単なる語呂合わせではなく、例えば砂糖(さ)は分子が大きいので最初に入れないと味が染み込みにくい醤油(せ)や味噌(そ)は香りが命なので最後に入れるといった、先人の知恵に基づいたロジックがありました。

[参考]酒やみりんの順は? 意外と知らない! 料理の「さしすせそ」「入れる順番とその理由」

こうした「なぜ」を知ることで、味付けの失敗がさらに減った気がします。

1. 基本の和風黄金比「1:1:1」

私が最初に覚えたのが、和食の基本です。

  • 醤油:酒:みりん = 1:1:1

これだけ。

鶏の照り焼き、豚のしょうが焼き、野菜炒め、きんぴら。

「あ、今日の味付けどうしよう」と悩んだら、とりあえずこの比率で合わせ調味料を作っておく。

これだけで、味がブレることが劇的に減ったのです。

材料を変えればレパートリーも増えるので、本当に助けられました。

2. 覚えておくと便利な「ジャンル別」黄金比リスト

少し自信がついた私は、他の比率もメモして冷蔵庫に貼るようになりました。

  • 煮物:だし:醤油:みりん = 8:1:1
  • 煮魚:酒:醤油:みりん = 6:1:1
  • 中華炒め:「あ、今日は中華が食べたいな」という時は、「醤油、酒、みりんにオイスターソース(または鶏ガラスープの素)を加える」だけで、一気に味が決まります。
  • フレンチドレッシング:酢:油 = 1:3 (または1:2)
  • マスタードマリネ:酢:はちみつ:粒マスタード = 50ml:大さじ1:大さじ1

この比率さえ覚えておけば、レシピサイトをいちいち開かなくても「だいたいこの味になる」という安心感が手に入りました。

さよなら計量スプーン。面倒な「計量」をやめるための私の練習法

黄金比のおかげで味付けへの不安は減りましたが、まだ「計量スプーンで計る」という作業は残っています。

次の目標は、この「計るストレス」からの解放でした。

1. 「目分量」は才能ではなく「練習」だった

料理のプロが感覚で味が決まるのは、長年の経験で「どのくらい入れたら、どのくらい濃くなるか」という感覚が染み付いているから。

それは才能ではなく、練習で身につけられるものだと知りました。

そこで私は、自分の「手」を計量スプーンにすることにしたのです。

  • 塩少々:親指と人差し指の2本で軽くつまんだ量。
  • 塩ひとつまみ:親指、人差し指、中指の3本で軽くつまんだ量。

最初は、これを実際に計量スプーンに出してみて「ああ、私のひとつまみは小さじ1/4くらいだな」と確認する作業を繰り返しました。

2. 意外な助っ人「ペットボトルのキャップ」

とはいえ、黄金比の「1:1:1」を毎回手で計るわけにはいきません。

そんな時に知ったのが、ペットボトルのキャップを使う方法です。

  • キャップ 2杯 = 約 15cc (大さじ1杯分)
  • キャップ 2/3杯(スクリュー線の上段) = 約 5cc (小さじ1杯分)

これを知った時は衝撃でした。

わざわざスプーンを出さなくても、調味料のボトルのすぐそばにあるキャップで計量できる。洗い物も増えない。

最初はキャップで練習し、だんだんと「このくらい入れたら大さじ1」というのが、目と手の感覚で分かるようになっていきました。

3. 「何が足りないか」が分かるようになる

目分量で料理をすると、どうしても味見が必要になります。

以前の私は、味見をしても「何が足りないのか分からない」状態でした。

でも、黄金比という「味の着地点」を知ってからは、変わりました。

「1:1:1」が基準だから、「少し甘みが足りないから、みりんを足そう」とか「しょっぱいから、酢を少し加えて和らげよう」と、調整できるようになったのです。

「適当」が「最適」に変わった日

今でも、お菓子作りのように厳密さが必要な時は、きちんと計量をします。

でも、毎日のご飯作りで、あのベトベトになる計量スプーンを取り出す回数は、本当に減りました。

キッチンに立ってから「あ、大さじどこ?」と探すあの無駄な時間。

料理のタスクが細分化されて永遠に終わらないように感じたあのストレス。

計量スプーンを使わないだけで、こんなにも心に余裕が生まれるとは思いませんでした。

私にとっての「目分量」は、単なる時短テクニックではなかったのです。

それは、レシピという他人任せの正解から抜け出し、「自分の感覚」で料理をコントロールできるようになったという、小さな自信の表れ。

失敗を恐れてレシピに縛られていた私が、ようやく「自分の料理」を手に入れた。そんな大げさなことかもしれませんが、私にとっては大きな一歩だったのです。

私が「完璧」を手放す、始まりの物語

この記事でお伝えした工夫も、私を縛っていた「ちゃんとしなきゃ」という思い込みから自由になるための、大切な一歩でした。

でも、そんな私が「完璧でなくてもいい」と自分自身を許せるようになる、その一番最初のきっかけをくれたのが「野菜の皮むき」という、たった一つの家事を手放した日のことだったんです。

この記事の根底にも流れている、私の「手抜きは愛情表現」という考え方の原点が、ここに詰まっています 。