フローリングワイパーのシート交換の手間と、掃除機との使い分けの悩みを「目的の割り切り」で解消した体験記です。
念願だったコードレス掃除機を手に入れて、これで床掃除のストレスから解放される…。そう思っていました。
それなのに、なぜか私の目には、床に落ちている一本の髪の毛や、部屋の隅に集まる小さな綿ボコリが、以前よりもはっきりと飛び込んでくるようになったのです。
掃除機をかけるほどの汚れではない。でも、確実にそこにある小さな汚れ。それを見るたび、チクリと心が痛むような、見えない重荷になっていました。
私が「また今度」とホコリから目をそらし続けた理由
以前の私は、床のホコリを見つけるたびに、小さなため息をついていました。
コードレス掃除機は確かに便利です。でも、子供がこぼしたお菓子のカスならともかく、髪の毛数本や隅のホコリのために、わざわざクローゼットから掃除機を持ってくるのは、どうしても「大げさ」に感じてしまうのです。
そんな時こそ、フローリングワイパーの出番。それなのに、私はワイパーを手に取ることもできませんでした。
そこには、二つの見えないハードルがあったからです。
一つは、「ワイパーは手抜き」という罪悪感。
しっかり掃除機をかけず、ワイパーで済ませることは、家事をサボっているような、どこか後ろめたい気持ちがありました。
「ワイパーだけでは不十分だ」そんな思い込みが、私を縛っていたわけです。
そしてもう一つの、もっと現実的なハードル。
それは「シートの交換が面倒すぎる」という、あの地味なストレスでした。
収納場所からワイパー本体とシートの袋を取り出す。袋を開け、シートを一枚引き出し、それを床に広げ、ワイパーを上に乗せ、四隅の穴にシートを指で押し込む…。
文字にすると数秒のことかもしれません。
でも、パートと育児で疲れ果てた心には、その「数秒の手間」が、とてつもなく重い労働のように感じられたのです。
結局、掃除機を出すほどでもない、でもワイパーを出すのは面倒。その狭間で「また今度」と先延ばしにし、ホコリは溜まっていく。
それを見て「私ってダメだな」と罪悪感を募らせる、そんな悪循環でした。
掃除機とワイパーは「主従」ではなかった
その重い気持ちがふと軽くなったのは、ある日、SNSで「掃除機をやめて、ワイパーとほうきだけにしたら“瞑想”になった」という言葉を見かけたことでした。
私は、ハッとさせられたのです。
私はいつの間にか「床掃除=掃除機をかけること」と思い込んでいました。
だから、ワイパーを使うことに「手抜き」の罪悪感を覚え、掃除機をかけない自分を責めていたわけです。
でも、違った…。
パートと育児で疲れ果てた平日に、私に必要なのは「完璧な掃除」ではありませんでした。
コードレス掃除機をクローゼットから運び出し、部屋中をガーッと掃除し、またそれを片付ける…という「大仕事」をこなす体力なんて、残っていなかった。
私に必要なのは、子供がこぼしたお菓子のカスや、隅にたまったホコリを見て見ぬふりをする罪悪感から、今すぐ解放されること。
フローリングワイパーは「掃除機の手抜き版」でも「代用品」でもなかったのです。
「掃除機をかける日」とは別に「ワイパーだけで済ませる日」を作るための、私の心を軽くするツールでした。
この「割り切り」が、私の罪悪感をスッと消してくれたのです。
平日に床掃除をワイパーだけでサッと済ませてしまうことは「手抜き」ではなく、心の余裕を生むための「賢い選択」だった。
そう思えるようになりました。
「シート交換の呪い」を解いた、工夫と道具
とはいえ、まだ「シート交換が面倒」という物理的なハードルは残っています。
1. 私が試した「シートの重ねづけ」
そこで私が試してみたのが「ドライシートをあらかじめ数枚重ねてワイパーにセットしておく」という方法です。
私はいつも3枚ほど重ねてセットし、リビングの隅に立てかけておきます。
掃除をして1枚目が汚れたら、そのシートだけをはがして捨てる。すると、下にはもう新しいシートがセットされています。
たったこれだけのことですが、私にとっては「袋から出し、広げ、四隅に押し込む」という一連の作業がなくなるだけで、ハードルがぐっと下がりました。
床の髪の毛に気づき、サッと拭き、汚れたシートをはがして捨てる。この「10秒」が、私の心の余裕になってくれたのです。
2. 「頑張らない」ための道具選び
ただ、この「重ねづけ」も、人によっては「剥がすのがかえって面倒」と感じるかもしれません。(私も、未使用のシートまで外れそうで、最初は少し慎重になりました。)
そんな地味なストレスさえも手放すために「便利な道具」に頼るのも、立派な「手抜き家事」だと思うのです。
最近は、シートの装着がマグネットやワンタッチでできるワイパー本体や、ワイパーで集めたゴミをかがまずに吸い取れる「電気ちりとり」という便利なものもあります。
それに、シート自体を高機能なものに変えてしまう、という選択肢もありました。
例えば、花王の「クイックルワイパー 立体吸着ウエットシート ストロング」のような製品です。
メーカーの公式サイトでも「掃除機・雑巾がけが一度に!」と書かれているように、これ一枚でホコリからベタつきまで取れるなら「ワイパーだけ」で掃除を終わらせる罪悪感も、さらに軽くなります。
私の小さな実験メモ
シートは何枚まで重ねられる?
使っているワイパーのヘッドの厚みにもよると思いますが、私の場合は4枚重ねると、さすがにクリップ(差し込み口)が外れやすくなりました。3枚が安定して使える限界かな、と感じています。
シートを無駄なく使う裏技?
「シートの下にプチプチ(梱包材)を挟むと全面使える」というテクニックも試してみました。
確かにクッション性が出て密着度は上がった気がしますが、重ねづけの手軽さと比べると、プチプチを用意する手間が勝ってしまい、私は続きませんでした。
「見て見ぬふり」をしなくなった日
ワイパーの目的を「掃除機が苦手なホコリを、すぐに片付けること」と割り切り「シートの重ねづけ」や「便利な道具」でその手軽さを最大限に引き出す。
この二つを手に入れてから、私の心は驚くほど軽くなりました。
床に落ちている髪の毛は、私をイライラさせる「敵」ではなく「10秒で処理できること」に変わりました。
ホコリを見て見ぬふりをする罪悪感も、掃除を先延ばしにするストレスも、ありません。
気づいた瞬間にリセットできる。その安心感が、心の余裕につながっているような気がします。
そして、週末。もし体力と時間に余裕がある「掃除機をかける日」が来たら…。
その時も、まずワイパーでサッとホコリを取っておけば、掃除機のブラシに髪の毛が絡まるストレスが本当に減りました。
でも、平日はもう無理をしない。
子供がお菓子をこぼしたベタベタも、高機能なウェットシートで拭き取って終わり。
以前はそんな汚れを見るたびにイライラしていた心が、少し穏やかになったような気がします。
「手抜き」だと思っていたワイパーは、私の「やらなきゃ」という完璧主義の呪いを解いてくれる、最高のパートナーでした。
今では、汚れたシートを一枚はがすたびに「私、えらい。今日も頑張らなかった」と心の中で小さくつぶやいています。
大げさなことではなく、その小さな達成感が、毎日の私を支えてくれているのです。