玄関の靴出しっぱなしと「どうせ汚れる」たたき掃除の諦め。完璧を手放し「ついで掃除」と「放り込むだけ収納」の仕組みで自己嫌悪とイライラを解消した体験記。

玄関の靴出しっぱなしと「どうせ汚れる」たたき掃除の諦め。完璧を手放し「ついで掃除」と「放り込むだけ収納」の仕組みで自己嫌悪とイライラを解消した体験記。

玄関の掃除と片付けの悩みについて、完璧主義を手放し、無理のない仕組みで心の平穏を取り戻すまでをまとめたものです。

玄関は「家の顔」だから、一番ちゃんとしなきゃいけない。 そう思っていました。

それなのに、パートから帰宅して目に入るのは、たたきに広がった砂や泥、そして家族が脱ぎ散らかした靴、靴、靴。

それを見るたびに、自分の全部が否定されているような、そんな息苦しさを感じていたのです。

砂だらけの玄関と「どうせ無理」と思っていた私が、心の平穏を取り戻すまで

以前の私は、玄関のチャイムが鳴るたびに、心臓が跳ね上がるような思いでした。「玄関、汚いままなのに…!」

特に宅配便の配達員さん。荷物を受け取るわずかな時間に、あの散らかったたたきと、出しっぱなしの靴を見られるのが、本当に恥ずかしかった…。

夫は家事に非協力的で、いくら言っても靴を揃えてはくれません。子供たちもまだ小さく、遊び疲れて帰ってくれば、靴を脱ぎ捨てるのが精一杯。

私自身もパートと育児で疲れ果てていて、毎日散らかった靴を直す気力も、たたきを水拭きする余裕もありませんでした。

雑誌やSNSで「風水的に、靴の出しっぱなしはNG」という情報を見るたび、罪悪感だけが募っていきます。

「どうせ掃除したって、明日にはまた砂だらけになる」

そうやって諦めと自己嫌悪を繰り返す毎日だったような気がします。

転機は、一番恥ずかしかった「あの日」

転機になったのは、ある日のことでした。

いつものように宅配便のチャイムが鳴り、慌てて玄関に出ました。荷物にサインをしようとした、その時です。

荷物を両手で抱えたままの配達員さんが、サインを待つでもなく、ふっと視線をさまよわせていることに気づいたのです。

その視線は、明らかに「荷物を置く場所」を探していました。

でも、うちのたたきには、子供の砂だらけの靴や、夫が脱ぎっぱなしにしたスニーカーが散乱していて、荷物を置けるような清潔なスペースは、どこにもなかった。

「あ…すみません、ここで受け取ります!」

慌ててそう言って荷物を受け取った瞬間の、あの何とも言えない恥ずかしさ。

配達員さんの困ったような、諦めたような顔。それが、私の張り詰めていた糸を切ったような気がします。

もう、無理だ。

雑誌やSNSで見た「完璧な玄関」を目指すのは、きっぱりと諦めよう。目指すのはピカピカのモデルルームではなく、家族が(そして私が)イライラしない、「心の平穏」が保てる玄関。

そう決めたのです。

そのために取り入れたのが、意志の力に頼らない、たった2つの「仕組み」でした。

仕組み1:「たたき」は水を使わない「ついで掃除」で終わらせる

まず捨てたのは「玄関掃除は水で洗い流すもの」という思い込みでした。

特に集合住宅では、水をジャバジャバ流す掃除は現実的ではありません。そもそも、その「大掃除」という意識が、私の腰を重くさせていたわけです。

そこで、「掃除のハードルをとことん下げる」ことにしました。

私が決めた「ついで掃除」のルール

タイミングを決める:「帰宅して靴を脱ぐ前」にやる

「掃除しよう」と思うと動けないので、「帰宅」という行動とセットにしました。

コートを脱ぐ流れで、そのまま玄関用の小さなほうきを手に取る。これなら、やり始めるまでは面倒でも、一度始めれば意外と体が動いてくれるものです。

水は使わない:ほうきと「スポンジ」だけ

まず捨てたのは「掃除は毎日やらなければいけない」という思い込み。以前は「毎日1分」と決めていましたが、それがかえってプレッシャーになっていたのです。

そこで、基本的なルールは「明らかな砂や泥が目に入った時だけ」ほうきで掃き出す、に変更しました。

週に1回、もし時間がある時だけ、たたきの黒ずみが気になる部分を、水で濡らしたメラミンスポンジでこすります。

この時「激落ちくん」のコラムにあるように、スポンジには「たっぷりの水」を含ませるのがコツなんですよね。

ゴシゴシこするのではなく、水が潤滑油になって汚れを削り取ってくれる。

たったこれだけでも、たたきの色がワントーン明るくなるものでした。

[参考]メラミンスポンジとは?使用方法や注意点などをご紹介! - 激落ちくん

仕組み2:玄関の「イライラ」を消す、「放り込むだけ収納」

たたきの砂が消えても、靴が出しっぱなしでは、結局イライラは消えません。

むしろ、私にとってストレスの本体は、掃除そのものより、この「脱ぎ散らかされた靴」の光景だったのです。

夫や子供に「片付けて!」と毎日怒るのも、言われる方もストレス。

そこで「片付けさせる」のをやめ「勝手に片付く」仕組み、つまり「1つの動作(ワンアクション)で終わる収納」に切り替えたわけです。

これは「トリガー行動」の考え方で「靴を脱ぐ」という行動のついでに、「放り込む」だけで終わるようにする。

これが、我が家の玄関リセットの「魂」になりました。

[参考]タイムマネジメントの技術:受動的な時間を能動的な時間に変える3つのステップ。|Future CLIP/富士フイルム

家族別の「放り込むだけ」収納

夫用:玄関に「ざっくり収納バスケット」を置く

靴箱にしまうのが面倒なら…と玄関の隅に大きめのバスケット(コンテナボックス)を設置しました。

「毎日履く靴は、ここに入れて」とだけ伝えたのです。靴箱の扉を開ける動作すらない「放り込むだけ」のこの方法が、夫には合っていたようでした。

子供用:「下半分」の専用エリアと「目印」

子供たちには、靴箱の下半分を専用スペースにしました。手が届きやすく、自分で管理できる高さです。

中は100円ショップのファイルボックスで一人ずつ仕切り「自分の箱にポイッと入れればOK」というルールに。

靴を揃える場所には、動物の「足合わせステッカー」を貼りました。

これがゲーム感覚で楽しいらしく、以前より格段に自分で靴を揃えてくれるようになったのは、嬉しい誤算でした。

私用:履かない靴を手放し「8割収納」に

結局、靴箱がパンクしていたのも原因でした。

1年以上履いていない靴や、サイズが合わなくなった靴を思い切って手放し、収納全体を「8割程度」に減らしました。

スペースに余裕ができたことで、靴の出し入れがスムーズになり、私の心理的な負担も軽くなった気がします。

玄関が整ったら、自分を責める時間が減っていった

今でも、我が家の玄関が完璧に片付いている日はありません。夫の靴がバスケットから少しはみ出している日もあります。

けれど、たたきに砂が溜まっていないだけで、視界がクリアになる。

出しっぱなしの靴が(許容範囲内に)収まっているだけで、心のざわつきが消えていく。

以前は、散らかった玄関を見るたびに「私がちゃんと管理できていないからだ」と自分を責めていました。でも、「仕組み」という土台ができた今、以前ほどイライラしなくなったのです。

何より、宅配便のチャイムに怯えることがなくなりました。

「家の顔」というのは、完璧に磨き上げられたタイルのことではなく、そこに住む私の「心の余裕」が表れる場所だったのかもしれません。

どこかで「朝一番に玄関を整えるのは、運を迎える儀式のようなものだ」と読んだことがあります。

私の場合、儀式というほど立派なものではありませんが、朝、砂が溜まっていない玄関を見るだけで、その日一日を少しだけ穏やかに始められる。

そんな小さな心の変化こそが、私にとって一番の収穫だったような気がします。